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美術手帖 2006年6月号

誌名: 美術手帖 2006年6月号

創刊: 美術出版社
発売日: 2006年05月17日

価格: 1,600円

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雑誌紹介

資料性の高いヴィジュアル・マガジンとして海外からも熱い注目を浴びている。1948年の創刊以来、たえずアートシーンをリードしつづけるオピニオン雑誌。


概要

BT2006年 6月号

■ ■特集 工芸発見! ― 日本美術ってすごい!

泥団子にハマる幼児の話題をよく耳にします。光る、硬いちょっと重い、つるつるしていて気持いい。あれって、モノをつくり、愛しむことの根っこだと思うんです。「さわりたくなる」「つくりたくなる」「ほしくなる」。日本美術、とくに工芸にはそういうモノ欲をダイレクトに刺激するなにか、つまり“モノ力”があふれています。欧米の美意識へのヘンなコンプレックスがないがしろにしてきた古い工芸から、工芸のエッセンスを敏感に嗅ぎ取った作家による新しい美術まで。これこそが“モノ力”だ、という、日本美術のエッセンスをご紹介します。美術に触れるには、先入観を捨てること。その大事さがわかります。
〜*〜*〜 目次 〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜**
1 横尾忠則の工藝礼讃
2 辻惟雄 日本美術と工芸の歴史
3 コンテンポラリーなモノ作家たち
4 対談1 須田悦弘×千宗屋 〈モノの価値について考えてみる〉
5 コラム1 越後妻有に、縄文時代以来の窯場が誕生
6 “つくってみたくなる”
7 批評1 現代美術としての工芸
8 批評2 もうひとつの工芸―展覧会シーン1985-2005
9 オススメ工芸ミュージアム
10 対談2 杉本博司×山下裕二 〈“モノ力”について考えてみる〉
11 コラム2 工芸をめぐるコトバ
12 批評3 偽装のジャンル―もしくは「工芸」という橋
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┃1 横尾忠則の工藝礼讃 ┃
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遊びをせんとや生まれけむ戯れせんとや生まれけむ遊ぶ子供の声聞けば我が身さえこそ動がるれ。美術とデザイン、その双方のジャンルを自由に行き来し、そこから常に斬新な発想と表現を生み出し続ける、現代の尾形光琳、横尾忠則。その横尾氏に今回は「工藝」に対する礼讃を主題に作品を作ってもらった。「梁塵秘抄」に歌われた,万人がもつ「遊び心、戯れ心」と、横尾氏の遊びゴコロとが共鳴する。
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┃2 辻惟雄 日本美術と工芸の歴史 ┃
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見過ごされてきた日本人の美的感覚、エキセントリックな表現や遊びの精神などを鋭敏に嗅ぎ分け、伊藤若冲岩佐又兵衛などの絵師を再評価し、近著『日本美術の歴史』(東京大学出版会)が美術書としては異例の4万部のベストセラーになった、辻惟雄氏。日本美術史の第一人者に、美術全体のなかでの「工芸」の位置、工芸が本質的に持つ、デザイン的な性格。「好み」という言葉に象徴される工芸の自由闊達さ。そんな新鮮な「工芸」観を語ってもらった。
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┃3 コンテンポラリーなモノ作家たち ┃
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素材と、技術と、つくる意思。そのいずれにも究極のこだわりを発揮するつくり手が生み出す「モノ」。さまざまな分野で、さまざまなモノがつくられている。モノそのものがもつ存在感が、われわれを魅了する。「モノ」の魅力を創出する13人、その仕事ぶりを紹介する。
村山留里子 / 奥畑実奈 / 新井達矢 / 前原冬樹 / 嵯峨篤 / 名和晃平 / 石上純也 / 上田博文+竹田直樹 / 高見澤英子 / 内田鋼一 / 杉本英輝 / 更谷富造
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┃4 対談1 須田悦弘×千宗屋 〈モノの価値について考えてみる〉 ┃
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「石ころと金は、ふつうまったく逆の価値なんですけど、考え方しだいでは、じつは同じところに行き着くこともある」
「空想でいいので、利休とデュシャンの対話を聞いてみたいです。近代以降のイメージの手垢をさっぱり洗い流したふたりの対話を」
道具というモノ / 名前と逆説 / 生きる道としての工芸と美術 / 「ことば」に使われない

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┃5 コラム1 越後妻有に、縄文時代以来の窯場が誕生 ┃
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この夏に開かれる「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2006」において、新潟十日町市の農村集落に“縄文時代以来”の窯場が誕生する。縄文時代中期の火焔型土器を出土した十日町市ではあるが、その後、やきもの文化は途絶えてしまっていた。その十日町の土質に注目した陶芸家たちが、この夏、「大地」の祭典で再び十日町の土を用いた「妻有焼」を展示する。
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┃6 “つくってみたくなる ┃
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見るのもいいけど、実際に自分でも作ってみたい。泥団子に魅了される幼児のように、工芸は人にそんな気持をおこさせる。さあ、先に紹介されたその道の第一人者に、その楽しみ方を教えてもらおう。
ガラス 高見澤英子 / やきもの 内田鋼一 / 能面 新井達矢 / ネイルアート 奥畑実奈
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┃7 批評1 現代美術としての工芸 ┃
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工芸の価値は作品の中に蓄積され、作品そのものから読み解かれる技術の中にこそ存在し、言葉から伝えられるものではない。その価値は「遺伝の記憶」「言語の記憶」と区別される「技術の記憶」として経験されるのである。
「芸術のための芸術」としての工芸 / kunstgewerbeから工芸へ―その興隆と失墜 / 「伝統工芸」と「近代工芸」 / 柳宗悦の民藝思想とその周辺 / 工芸と「上位美術」 / アルス・ノーヴァ―「新しい術」が開いた現代美術と工芸の関係 / 終わりに―「art for art’s sake」としての工芸
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┃8 批評2 もうひとつの工芸―展覧会シーン1985-2005 ┃
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「生活」との関わりで語られるいっぽう、「芸術」として鑑賞の対象になる工芸。美術館における展覧会というメディアをとおしてその存在をかえりみることは、とりもなおさず工芸の本質を考える行為につながる。最近20年間に行われた、工芸をテーマとした展覧会から、同時代の視点を汲み取ってみよう。
工芸の同時代性 / ジャンル横断のダイナミズム / 「挑むかたち」という挑発 / 再び、工芸の同時代性について
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┃9 オススメ工芸ミュージアム ┃
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古くから土地に根付いていたり、歴史のなかで権力者や数奇者に蒐集されたり、工芸を訪ねてまわると、かならず「日本」の姿がみえてくる。ここでは全国の特色ある工芸ミュージアムをチョイスしてみた。工芸から日本を考え直す最適の場所。
日本こけし館 / 蟹仙洞(かいせんどう / 茨城県陶芸美術館 / 春風萬里荘 / 益子参考館(濱田庄司記念館 / METAL ART MUSEUM / 遠山記念館 / 東京国立近代美術館工芸館 / 渋谷区立松濤美術館 / 五島美術館 / 永青文庫 / 大倉集古館 / 根津美術館 / 畠山記念館 / 日本民藝館 / 刀剣博物館 / 能面博物館 / 岐阜県現代陶芸美術館 / 愛知県陶磁資料館 / 浜松市美術館 / 豊田市美術館 / 松本民芸館 / 徳川美術館 / 芸術の森 伊豆ろう人形美術館 / 石川県立美術館 / 滋賀県立陶芸の森 陶芸館・産業展示館 / 石川県輪島漆芸美術館 / 金沢市立安江金箔工芸館 / 武生市越前の里資料館 / 佐賀県立九州陶磁文化館
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┃10 対談2 杉本博司×山下裕二 〈“モノ力”について考えてみる〉 ┃ ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
「これ、欲しい。ポケットに入れて空港のゲート行ったら、ピンポン鳴るのかなあ?」「先日拝見したときより、古色がついている。現代作か古代作か、見分けがつかない……
古色のついたモノたちに酔いしれる / 無署名性の美意識について考える / 日本美術のモノ力を見直してみる
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┃11 コラム2 工芸をめぐるコトバ ┃
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工芸作品に投げ掛けられる言葉のほとんどは、「景色がいい」「重厚な佇まい」「味わいが深い」などといった、個人の趣味も含めた表層的な印象か、もしくは技術的な評価になることが多い。ここでは、制作者自身が、時代と向き合い、自己の仕事を対象化したときに得られた、その結実としての言葉を紹介する。柳宗悦、八木一男、山田光、中村錦平。「工芸」を語る作者の言葉に、耳を傾けてみよう。
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┃12 批評3 偽装のジャンル―もしくは「工芸」という橋 ┃
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工芸と現代美術。ふたつの領域を見つめながら、それぞれの新しい可能性を探ってきた筆者。昨年、東京都現代美術館で企画した「アルス・ノーヴァ│現代美術と工芸のはざまに」展、5年間にわたる資生堂ギャラリー「life/art」展の試みを経て、その眼に映っているものは?
工芸とデザイン / 偽装のジャンル / 造形芸術における“公民権運動”と伝統主義 / アヴァンギャルドと工芸 / 情報社会における造型 / 分離と結合 / 工芸という橋


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